ポンド円のレート予想 実質相場と名目相場、購買力平価
一般には「国力が衰えると通貨相場も下落する」といケ勘違いが根強い。その先入観を支持しているように見える通貨が、この英ポンドだろう。名目相場は1980年の500円台から90年代初頭には200円を大きく割る水準まで下落した。
しかし、こうした下落トレンドもPPPが示すとおり、インフレ率の相対的な高さを反映したものだ。「国力」を持ち出す必要はない。ところが、2000年代に入って「里ハ変」が起こった。160~170円程度だった英ポンドが持続的な上昇トレンドをたどり、07年には240円台まで高騰したのである。マスメディアでは「英国経済の復活」「国際金融都市ロンドンの競争力の強さ」などが注目されるようになった。しかし、実質相場で見れば200円を超えた高騰がいかに購買力平価から乖離した割高(過大評価)なものであったかよくわかる。
当時のロンドンは過大評価(リスクを過小評価)された米国の証券化商品を世界中に売りさばく機能の一翼を担い、また同時に英国内では住宅バブルが起こり、高金利につられた投資資金の流入に支えられた投機熱が蔓延していた。結局、米国発の金融危機の勃発とともにポンド円相場は下落を始め、09年1月には95年以来14年ぶりの最安値を更新、118円台を付けた。この水準は実質相場指数ベースで見ても割安な水準であり、実際に名目相場も反発して140~160円の水準に戻っている。
英ポンドは対ドルにおいても、量的緩和、財政赤字拡大などの懸念材料に押されて、売りポジションが積み上がっていた。ポンド反発ドル安の動きには、その巻き戻しも影響しているとされる。80年以来の実質相場の平均値は指数で84であり、現在の名目相場だと150円台前半の水準がこれに対応している。